鉄地 橘図唐草紋様鍔
鑑定 江戸肥後
江戸時代中期




「古事記」によれば、垂仁天皇の命で常世の国に行った多遅摩毛理(たちまもり)が不老不死の薬として「ときじくのかくの木の実」を持ち帰った。これが橘であるという。奈良時代からしばしば登場するこの柑橘系植物は、常緑の葉という事で、長く続く=家の存続、と解されて珍重されたという。家紋としても奈良時代の橘家から始まり、多数の家でよく使用されている。
 また、橘の木は積雪によく耐え、強く育つ事から、人徳あり奥ゆかしい人を「橘のようだ」となぞらえたという。
 本作、力強い木瓜型の江戸肥後鍔。ねっとりとした鉄味にくわえ、黒々とした肌は高貴ささえ醸し出している。また、橘と唐草紋様は決して派手ではないが、品のある布目象嵌で完璧といってよいほどの状態を保っている。これら力強い造詣と品のある金象嵌などは真に橘らしさを顕しており、見事と言うほかない。日本刀剣保存会鑑定書付き。

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