鉄地 立棒透かし桐唐草紋様鍔
銘 正阿弥
江戸時代 中期




 円窓とも見られるこのデザインは茶室や寺院、和風住宅の窓に多く取り入れられている。建築用語で「まるまど」と称される。
 禅において円窓(えんそう)とは、己の心を写す窓として用いられる。その根源は禅の「円相」で、仏性や宇宙などを表し、見る人の解釈にまかせるものである。これを円窓鍔と見なせば、己を見つめなおす鍔とも受け取れる。解釈が自由だからといって、間違っても排水溝のフタと評してはならない。下水に吸い込まれかねない。
 本作、非常に気品のある立棒透かし鍔で、立棒と覆輪との間もぴっしりと作っており、手の抜き所は見られない。鉄色も良く、ねっとりとした鉄味も申し分なく名品である。金による桐唐草紋様の布目象嵌も、さらに華を添えている。所々に象嵌の欠損が見られるが、そこがまた良い雰囲気を出している。
 銘は正阿弥とあるが、やや彫りが薄い。桐箱には貴啓(花押)という人物が秋田正阿弥であろうと評している。

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