素銅地 高砂図小柄
江戸時代 中期


     


 高砂図は、尉と姥が高砂の裏にある松の元で葉を掃いている図で、結婚の祝儀に欠かせないものとなっている。仁功皇后が三韓征伐の凱旋の際に高砂神社を創建。そこに生えた松を「相生の松」といい、一つの根から雄と雌の木が生えている事から末永い夫婦愛を示す。
 能の演目にも「高砂」があり、結婚披露宴も定番でもある。九州阿蘇社の神官が播磨国高砂の浦にやってくると、そこに老夫婦が現れて松の木陰を掃き清め、高砂と住吉の松は相生であり、夫婦の愛は永遠であると解く。そして、老夫婦は自分たちが高砂、住吉の松の精であると明かし、舟に乗って消えていった。神官もそれを追いかけて住吉に至って歌を詠むと、住吉明神が現れ、美しい月光の下、神舞を舞う。

 本作、色合いの良い素銅地に松が現されており、そこから翁と嫗が夜の月を眺めている。住吉明神による月下の神舞の傍ら、松の精は美しい月を愛でているのだろうか。松の幹の中から眺めている構図が面白い。人物の表情、衣服、髪、動きなど細やかに表現されており、松の重なり具合、月の雰囲気も派手過ぎず、象嵌も質素で良い。
 側面を見ると、表と裏の合わせ目が少々乱れている。まだ完成されていない江戸中期までの作風を現しており、これがまた良い。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


上沢御所!へ

下野戦国争乱記へ